停電の夜、母と

浜松に台風が来た日、停電になった。水も出ず、やることがなく、ここぞとばかりに内面が出しゃばる。心は自由だ、よしあし。

久々に泣いた。暗いってーのは、よくない。

1

私は気づいたんだ。
私の醜いところ。

つまり、父と母が言い争うのが極端に嫌いで、まあそれは平和主義として誇るべき長所と捉えることもできるかもしれないんだけど、争いの本質を見抜こうとしないこと、改善しようと自ら働きかけていないこと。

なぜだったか。

楽だからだ。

喧嘩を始めたら自室にこもりイヤホンをつけて爆音でフラテリス聴いていれば傷つかなくて済むから。

既になんとなく分かっていた私の回路を、視覚が奪われた22時の停電してる部屋ではっきりと見たとき、なぜこれを28歳になるまで放っておいたんだと虚しくなった。

よくないと思った。
どうにかしたいと思った。
勇気が欲しい。

当事者に打ち明けるのはとんだ見当違いなんだけど、私の事情を知っているのは家族しかいないわけで、かーちゃんに打ちあけてみっかと思い至る。

暗い部屋から暗い部屋に向かって、かーちゃん、と呼んでみる。返事がない。寝ていた。

だから私は泣いたんだ。虚しさに気づいたから、変わろうと決意するのは怖いから、電気がないから。

そして、布団にうつ伏せになって涙を流し始めたすぐあと(本当にすぐあと、30秒後くらい)に、電気がついたの。

電気が(中部電力が?)無責任に私の背中を押した気がして、いつもより明るく感じる部屋だったのに泣き止むことはできなかった。ただ「泣いている自分に浸るな」「悲劇を願うな」と繰り返していた分、成長してたのかなあ。悲劇のヒロインぶってごまかすクセがあることに最近気づいたから。それで今ここにいるんだから。

2

母はいつのまにか起きていて、溜まった洗い物をしていた(電気と一緒に水も止まっていた)。

手伝おうとキッチンに向かったのは、自分ではもう泣く以外に策が見当たらないように感じられたからだと思う(泣くほど辛いと知って欲しかった?まさか!)。

とにかく私はキッチンに到着してもまだまだ泣いていた。母は私が泣いているのを見たくらいでは追求してこないので、「暗いと泣けるね」のつぶやきで引っかける。そうしてようやく「私しゃ暗いくらいじゃ泣かないよ、どうした?」という言葉を引き出すのだ。聞いてくれ、とは言えないのが私である(よくない)。

そしてすぐ告白を始めないのも私である(超よくない)。「大丈夫〜」を一枚かますの。これ、どういう意図で言うのか自分でも分からん。結局、変わることは怖いこと。

「やっぱり3人で暮らすの嫌になった?」

母の助け舟。それまでもごもごしていた私は急にはっきり

「そうじゃない」

と言ったけど、これは我ながら素敵な応答だったと思う。

「それはもう抜けてて」と続ける。本心。そこで初めて、私が家になかなか帰らない理由、ご飯を食べたらすぐに部屋へ戻る理由と、そんな自分が嫌で嫌でなんとか変えたい旨、私の勇気で一家を平和な空間へと変革したい旨を述べる。涙を止め、珍しく饒舌にまくしたて、独白に近い。

「それで私はなぜかーちゃんにこの話をしたかと言うと、」

ここでようやく言葉が詰まる。

喋りながら、やっぱりこれはかーちゃんに言うべきことじゃなかったと思ったんだ。私が2人をなんとかしたいって、また私は2人のことバカにしてる。

母は「そう思わせないようにすべきだね、ごめん」と言った。私は「それを言わせたくて話したんじゃない、そういう問題じゃないのよ」と返す。まあそう意識してくれること自体は大歓迎なんだけど。

私はただ仲良く楽しく暮らしたいだけなんだ。その暮らしに恐ろしい喧嘩は不要だと思ってるだけで。2人のためじゃなく、単なるエゴ。

3

喧嘩をしている本人たちは、その最中、自分のことしか考えられていないのだそう。だから母の提示した策は「割って入ってやめろと叫ぶ」だった。

いやあ、、そうですよねえ、それは分かってるんだけど、それができなくてって話で。結論、私はやっぱりスタートラインに立ったにすぎないということが分かっただけだったんだけど、なんか話した時点で私はもうさっぱりしていた(話すだけで楽になるって本当なんですね、初めて知りました)。

母は「嫌な気持ちになるのも分かるし、言えないのも分かるよ、私もそうだった」と、自身が子供の頃を引き合いに出して話し出す(子供の頃って、私しゃ28よ。ああ、今までの怠惰のツケだ……歳だけ重ねて…)。自分が嫌な思いしたのに、同じ思いをさせてるんだなあって反省してたっけ。

あと、「自分の思ってること、伝えるの苦手だなあ」と私がつぶやいたとき、それは本当になんとなくの独り言だったんだけど、母は「小さい頃からそうだったよね」と返した。そして「そうしちゃったのかな、私が」と今度は母が独り言。

私は特段それが悪いことだとは思っていないのだけど(なんかいいよね、高倉健みたいで)、母は少し悲しんでるみたいだった。

今週のおすすめ

ハロウィン
限定

一年のうち、最もお菓子とかのパッケージのキャラがかわいいのは、ハロウィンだと思う。